<新刻版>いよいよ発売です!

中澤系歌集『uta0001.txt』(双風舎)の発売日が近づいてきて、とてもどきどきしています。5月4日の「第20回文学フリマ東京」にも、「中澤系プロジェクト」としてブースを出すことになりました。
(金)
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「第20回文学フリマ東京」に出展します

 「中澤系プロジェクト」として、「第20回文学フリマ東京」にブースを出します。いままで、買い手として何度か東京の会場に行ったことはありますが、ブースを出すのははじめて。中澤瓈光(りこう)さんと一緒に売り子をします。

 文学フリマの会場で販売されている短歌の同人誌やZINEは、1,000円未満のものが多いので、定価1,900円の中澤系歌集『uta0001.txt』は、高くみえるだろうな、とは思っています。それでも、文学フリマの会場で、『uta0001.txt』の実物を手に取っていただけると思うと、わくわくします。

現物を見てもらうチャンス!

完成した『uta0001.txt』新刻版。帯文は宮台真司さん。銀色の表紙から一転して黒色に。是非、手にとってみてください。

 2013年10月に、紀伊國屋書店新宿本店で「本屋で歌集を買いたい」というトークイベントがありました。その時、イベントに参加した友人が、「わたしは実際に歌集を手に取って、本のたたずまいを確認してから買いたいのに、書店に行ってもほとんど歌集がない。どれだけ人から『いい歌集だよ』と、おすすめされても、私にとっては、本のたたずまいが大事。ネット書店では歌集を買いにくい」という話をしてくれました。

 たしかに、ふつうにリアル書店で本を買うときは、現物を見てから購入します。装丁に一目ぼれして、知らない著者の本を買うこともあります。

 その頃のわたしは「歌集の世界は特別だから」「自費出版で少部数だったら、書店に並ばないのは当たり前」「歌集を読む人の99%は、短歌を作る人なんだから、贈呈文化が発達してしまうのもしかたがないのでは?」と、なんとなく感じていました。結社に入って7年目で、先輩や歌友から、歌集を贈っていただくことが少しずつ増えたために、そう思うようになっていたのかもしれません。

 このときの友人の言葉で「ああ、そうか。歌集を出したら【手に取って、実際に見てもらう】という機会を、自分たちで作り出さなくちゃいけないんだ!」と強く思ったのです。<現物を見てもらえる場所>のひとつとして、文学フリマに参加します。文学フリマ限定の特典も準備中です。ぜひ、ブースにお立ち寄りください。

 » 第20回文学フリマ東京/F-03 [Eホール(1F)] 詩歌|俳句・短歌・川柳 「中澤系プロジェクト」

不思議な縁

 今回の版元である双風舎、短歌の世界ではなじみのない名前だと思います。思想・社会・メディア・教育など、人文系のジャンルの本が中心で、「詩歌ジャンル」の本は今回が初めて、とのこと。中澤瓈光さんが、探してこられた出版社です。

 個人的には、歌集を一度も作ったことがない出版社よりは、歌集専門出版社のほうがいろいろ作業がしやすいのではないか、と思ったこともあったのですが、双風舎のブログを読むと、版元は版元でとまどいがあったようです。それでも結果的に、中澤系の作品の持つ力が、双風舎の谷川さんの心を動かしたんだな、ということがわかる記事でした。

 » 双風亭日乗:双風舎から歌集が出ます!

 今回の新刻版には、社会学者の宮台真司さんの長文を寄せてくださいました。これは、もともと宮台さんの本を刊行していた双風舎だからこそできたこと。

 『終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル』(筑摩書房)という宮台さんの著作タイトルと、中澤系の

  • 終わらない日常という先端を丸めた鉄条網の真中で

を並べてみると不思議な縁であり、必然的な縁のように思われます。

 縁といえば、もうひとつ。今回、制作の途中で、版元から「イラストを入れたい」という提案がありました。「むむむ、イラストはつらいですぅぅぅ……」というのが、短歌の人であるわたしの正直な気持ちでした。版元は「短歌の人たちだったら、本の中に短歌が並んでいるだけでもいいかもしれないけれど、そうじゃない読者のために、とっかかりとして何かあったほうがいいのでは?」というご意見でした。

 そこでひらめいたのが、未来短歌会黒瀬選歌欄の主水(もんど)(とおる)さんの存在です。主水さんは、東京芸術大学デザイン科に在学中の大岩雄典さんでもあり、さまざまな美術活動をしておられます。主水さんが、短歌を始めたきっかけのひとつが、中澤系の短歌作品だ、と聞いたことがあったので、「いま、こんな話になっているんだけど……」と相談してみました。その結果は……。

 ぜひ、実際の『uta0001.txt』を手に取ってご覧ください。(なお、造本・組版は、大岩さんではなく、米村緑さんです。念のため。)

校正のあれこれ

 ふつうの歌集の場合、校正はできるだけ多くの人に見てもらったほうがいい、と言われます。今回も、校正協力のお申し出があったのですが、<中澤瓈光さんがお持ちの本人ゲラを優先する>という方針があったため、何度も瓈光さんとお会いして、結社誌「未来」のコピーも参考にしつつ、ひとつひとつ確認していく、という形になりました。

 旧版で、あきらかな誤字であるものを直すことには、迷いはありませんでした。(例:輸ゴム→輪ゴム、受像器→受像機など) また、旧版とは表記が違う形で本人ゲラが残っている歌に関しては、本人ゲラを優先しましたものがあります。たとえば、

  • 完全なことばを産もう永遠にことばを使わなくて済むような
  •      ↓
  • 完全なことばを生もう永遠にことばを使わなくて済むような

 この歌は、すでにさまざまなツイッターのbotで「産もう」表記で浸透してしまっているので、かなり迷ったのですが、新刻版では、本人ゲラに準じて「生もう」としました。

 また、英単語には存在しないスペルや文法のものでも、あえて正しいものに直さず、そのまま残しているものもあります。

 このあたり、ほんとうにデリケートなところで、もしわたしが生前の中澤系さんを直接知っていたら、こうした作業はできなかったかもしれません。本人ゲラと、瓈光さんの決断で、最終的な表記をひとつひとつ確定していきました。

 作業の途中、短歌で使われている記号がふと気になって、「これ、このままのフォントでいいでしょうか? 本人ゲラではどんな感じになってます?」と確認したところ、それまでノーマークだった別の一文字の欠落に気づいたこともありました。瓈光さんとは、中澤系プロジェクトのさまざまな場面で、「系さん、わたしたちを空から見てるみたいですね」という会話をしてきたのですが、この時も中澤系のテレパシー(?)を感じました。

新刻版の解説は、斉藤斎藤さんに

 新刻版の解説は斉藤斎藤さんにお願いしました。中澤系と入れ替わるようなタイミングで作歌を始められた斉藤さんの目から、『uta0001.txt』はどう見えたのでしょうか。

 中澤瓈光さんの「兄・中澤系の思い出」では家族からみた中澤系の姿を、「新刻版刊行に際して」では今回の編集作業に関する詳細がわかる形になっています。

 雁書館版のさいかち真さんの編集後記、岡井隆さんの解説、穂村弘さん・加藤治郎さん・佐伯裕子さんの栞文も、すべて再録させていただきました。すでに雁書館版をお持ちの方も、あらたな発見があるような新刻版になっていると思います。

作家・倉阪鬼一郎さんの「作家の本棚」でも

 クラニ―こと、倉阪鬼一郎さんの「作家の本棚」でも、新刻版の紹介をしていただきました。倉阪さんの『怖い俳句』(幻冬舎新書)にも、中澤系の短歌が引用されていたのですが、<倉阪さんと中澤系には地縁があった>ということが、この記事でわかって驚きました。このページでは新刻版の告知も大きな字でしていただいており、ありがたく拝読しました。

 » honoby:作家の本棚|倉阪鬼一郎(くらさかきいちろう)

予想をこえる反響が

 書店への予約数が予想以上で、いま、配本をどうするか、いろいろ調整をしているところです。『uta0001.txt』新刻版を確実に手に入れたい方は、お早目にお近くの書店にご予約ください。また、「読書会をしたいから、まとめて買いたい」などのご要望がありましたら、中澤系プロジェクトとして対応させていただきます。お気軽にご連絡ください。

 » 連絡先:

 さて、この連載は、今回が最終回の予定だったのですが、まだまだお伝えしたいことがあり、もう少しtankafulの場をお借りすることになりました。次回は関連イベントなど、いろいろ告知できるといいな、と思っています。

ほんだ・まゆみ
2004年 「枡野浩一のかんたん短歌blog」に本多響乃(ひびきの)として、投稿をはじめる
2006年 本多真弓として、未来短歌会入会、岡井隆に師事
2010年 未来年間賞受賞
2012年 未来賞受賞
現在も、本多真弓・本多響乃のふたつの名前で活動を続けています。
Twitterid = mymhnd
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