うたらばの作り方
短歌募集開始から投稿受付まで
「うたらば」の短歌募集はすべてインターネット上で行っています。そのため告知も基本的にはネット上。主な活動場所としては「公式サイト」と「Twitterアカウント」がありますが、告知に関しては基本的にはTwitter上で行っています。今回ご紹介するうたらばvol.11【家族】の短歌募集開始は2014年1月26日。公式サイトの「募集中の短歌」欄と「投稿フォーム」を更新して募集開始準備が整います。
締切は当初5月31日と発表したのですが、角川短歌賞の締切と見事に重なっていたため、即座に1週遅らせた6月7日に訂正しました。4ヶ月も先の締切。告知をしてもおそらく誰もが「まだ先だ」と思うでしょうし、フリーペーパーの短歌募集開始はいつもあまり大きく宣伝していません。
短歌募集を開始したあとはしばらく放置して、締め切ったばかりの前号vol.10【機械】の制作を進めます。この制作も楽しかったのですが、今回はvol.11【家族】の紹介なので割愛。次のステップへ移ります。
短歌締切から一次選歌まで
ろくに宣伝もせずに4ヶ月が経ちました。賞に応募される方の5月はそのことで頭がいっぱいのはずなので余計な宣伝は控え、6月頭から告知開始。
あとは締め切り日当日にもう一度アナウンス。
基本的に「過剰な広告は嫌われる」という認識で活動しているため、アナウンスはいつも少なめです。そのため「忘れてた!」という方が毎回いらっしゃいますが、そこは何卒ご理解いただければと思います。
そんなこんなで、締切がやってきました。ご投稿いただいた作品はすべてメールで届きます。以前はこれらのメールから1通ずつ内容をコピペして詠草一覧を作っていたのですが、最近は複数のメールの内容をExcelファイルに自動変換する便利なソフトを導入したため、詠草まとめにかかる時間が圧倒的に短縮されました。すごいぞ文明の利器。詠草をまとめたところ、今回の投稿作品は全部で535首。わずかですが過去最高投稿数を更新しました。届いた詠草は作者部分をカットして一度、紙に出力。それを持ち歩いて移動時間や本業の空き時間などを使って選歌していきます。(選歌基準については今後の記事でしっかり書きたいと思っているので今日のところはさらっと進めます。)
選歌は一度チェックをして気になる作品を選んだあと、数日おいてもう一度、あらためて出力した紙で選びなおします。うっかり素敵な作品を見落として後悔しないように、時間はかかりますが二重にチェックしています。ここまでで1次選歌が完了。今回は1次選歌で全528首から70首を選びました。まだまだ作品数が多く誌面に収まりきらないので、さらに絞り込む必要があります。
2次選歌から掲載短歌決定まで
次の段階では、なるべく最終的な誌面での見え方に近い状態で選歌をするため、すべて縦書きで出力します。
この局面では登場するモチーフや伝えたい感情の近い作品同士を比べてどちらがよいか、といった編集的なバランスも加味した選定を行います。どちらも甲乙付けがたく素晴らしい場合はもちろん両方掲載することもあります。絞り込みの目標は30首。投稿数がさらに増えたらページを増やして掲載短歌数を増やすことも考えなくては、といつも考えていますが予算的な問題もあり今のところは30首掲載が限界です。試行錯誤の末に、掲載する短歌が決定。次は写真撮影です。
自分でハードルを上げる写真撮影
ここまで来ると短歌はどの作品も素敵なので、あとはビジュアル化しやすいか、ビジュアル化して良くなるかという基準で写真作品にする10首を選びます。選んだ10首にそれぞれラフイメージ画を作成。作品の絵解きにならないように、適度な距離感が出るような場面を心がけて。非常に恥ずかしいですが、せっかくの機会なので今回描いたラフもいくつか公開します。
ここからはラフを写真作品にするための撮影方法を考えます。図3は手料理が必須、図4は女性ふたりが必須。図5は海の見える墓地が必須。自分で描いておいてなんですが、ハードル高くて泣きそうです。まずは図3、料理の撮影と思うとすぐに最近フードコーディネーターとして仕事をしている嶋田さくらこさんが思い浮かびました。しかも都合がいいことに図4の短歌はさくらこさん本人の作品。交渉をした結果、図4では作者本人&千原こはぎさん出演、図3はさくらこさんの手によるプロの料理での撮影が実現しました。THE一石二鳥。ラフをもとに撮影した作品が図6と図7です。料理を美味しそうに見せるために水+片栗粉に熱を加えたものを煮物の表面に塗っているさくらこさんを見てプロすげえ…!と思ったのが印象的な撮影でした。
そして、今回の最難関と思われた図5のラフ。なんの心当たりもないのでとりあえずググります。教えてグーグル先生。「大阪 お墓 海が見える」。…出ました。お墓探しのサイトが大量に。なんて便利な世の中なのでしょう。大阪府と兵庫県のいろんなお墓を調べてみた結果、大阪府阪南市の泉南メモリアルパークさんへ伺うことにしました。自宅から電車に揺られること1時間半、さらに徒歩で20分。実際に行ってみるとラフで描いたようなお墓の形ではなかったのですがそこは気にしない。個人のお墓にクローズアップするのも問題がありそうなので、あくまでも風景として撮影しました。その写真が図8。ラフとはまったく違う構図になりましたがその場で考えて決めていくのも撮影の楽しいところです。
3首分の写真は撮りためていた自作ストックから作品世界にちょうど合うものがあったので、今回は7首分についてオリジナルで撮影しました。すべての撮影が終わると、デザインと編集作業が始まります。
デザイン・編集から公開まで
うたらばのページ構成はいたってシンプル。写真作品10個と佳作集ページ(20首掲載)、それに目次や編集後記があるだけです。なので編集作業で一番大変なのは、創刊号から続けている短い言葉を各作品につけること。なぜこれがあるのか、なくても読めるのに、という意見をいただくこともありますが、すべては短歌を読み慣れない人がフリーペーパーを手に取ったときのため。写真と短い言葉で、短歌の世界をバックアップして少しでもスムーズに読み進めてもらえるようにする。そういうつもりで、主張しすぎない言葉をつけていきます。
言葉が書けたら1ページずつレイアウト。以前は短歌をかなり大きく配置していたころもありましたが、改行位置によっては初めて短歌を読む人が57577のリズムを取りにくくなるかもしれないという懸念から、2行で組む今のかたちになりました。10首分の作品のレイアウトが終わったら、佳作集、表紙、目次のデザイン、さらに編集後記に自作1首を添えて最新号データの完成です。選歌に約1ヶ月。写真撮影に約1ヶ月半。仕上げ作業に約2週間かかっています。
誤字脱字がないかの校正のあと、でき上がった編集データからPDFデータと各ページの画像を書き出し、サイトの更新作業に入ります。ブラウザ上で見られるように画像をスライドショーにしたもの、PDFデータで閲覧できるもの、画像一式をzipファイルにしてダウンロードできるようにしたもの。それぞれミスが無いか確認しながらリンクを貼っていき、10月4日、ようやくサイト上での公開が完了しました。
入稿から発送まで
うたらば本誌はサイト公開がゴールではありません。あくまでも最終目標は全国各地の配布店舗に冊子を届けて配布してもらうこと。製本業者に印刷をお願いするための入稿データを作ります。といってもこれは簡単な作業。もともと印刷用に作っているデータですので保存時の設定を少しいじるだけであっという間に入稿データは出来上がります。必要なデータを用意して、入稿完了。約10日後の10月15日、刷り上がった冊子800冊が自宅に届きました。
毎回のことですがこの梱包を開けるときが一番ドキドキします。入稿ミスで左開きになっていないか。ページ番号を間違えていないか。取り出してチェックしましたが今回はどうやらノーミスのようです。よかった。ここまで来たらあとは配布店舗様に郵送するだけ。
vol.11【家族】はまさに今から全国に散らばっていきます。配布状況は随時更新していきますので、お近くに配布店舗がある方はぜひチェックしてみてください。配布店舗の紹介はこちら「うたらば最新号・配布店舗一覧」へ。
さらに!
今回は初の試みとして、授業で活用したり、生徒あるいは来場者が自由に閲覧できる場所に設置できる教育機関や図書館にお勤めの方へ、個別郵送を受け付けます。これは過去に、大阪経済大学や福島県立相馬高校の先生から相談を受け個別に郵送したケースを公式に募集してみようという試み。生徒に見せてみたいという先生や図書館に置いてみたいという方、ぜひご一報ください。 詳細はこちら「うたらば・教育機関等への個別郵送について」をどうぞ。
最後は宣伝になってしまいましたが、連載第2回はここまで。少しでも多くの方が最新号の冊子を手にしてくださることを願っています。