活動の今と、はじまりのこと
「うたらば」って?
今回は、そんな「うたらば」の基本情報と創刊の経緯について触れてみたいと思います。
データで見る「うたらば」
「うたらば」がどの程度の規模の活動なのか、数字を見てみると分かりやすいのではないか思い、関連する数字をまとめてみました。最初はフリーペーパーから。
短歌を公募した最初のフリーペーパーvol.01【夕刻】では47名から86首の投稿をいただきました。配布店舗が10店舗ほどでしたので発行部数も150冊。冊子はすべて手作りです。本作りの知識もほとんどないところからのスタート。製本用ホッチキスを片手に深夜にガチャガチャと試行錯誤していたことが思い出されます。作った本が皆さんの話題になることをモチベーションとして回を重ねること10回。最新号vol.10【機械】では投稿短歌数が524首。投稿者数も147名と、初回から比べると5倍以上の投稿数になりました。配布店舗は最新号で34店舗。初回の5倍とまではいきませんが、店舗以外でも教育機関でテキストとして活用していただいたり、超結社の歌会にて配布していただいたりと、「うたらば」を手に取ってもらえる機会は初期に比べるとかなり広がったように思います。発行部数は現在800部。発行部数500部を超えたvol.07【鍵】からは手作りを泣く泣く諦め、印刷業者に製本までお願いしています。手作りする喜びより睡眠時間を確保する生き方を選んでしまいました。
続いて、うたらばブログパーツのデータ。
ブログパーツはもともと宣伝用として開始したもの。自分の短歌が他の人のブログ上に表示されるという発表スタイルを珍しく感じてもらえたのか、気付けば活動の柱のひとつにまで成長しました。
数字で見ると、第1回(テーマ「お祭り」)では27名から55首の投稿。現時点での最新回である第66回(テーマ「終」)では145名から628首の投稿をいただいています。テーマによって投稿数の増減はありますが、第40回以降はほぼ毎回100名を超える方がご投稿くださっています。設置ブログ数も100に迫る勢いです。今回あらためてデータを振り返ってみて、「うたらば」がネット上で短歌を詠む方々の投稿先のひとつとして少しは認識していただけてきたのかな、と手前味噌ながら少々安堵してしまいました。もちろん、まだまだこれからですけどね。
きっかけ其の1・夜ぷち終了?!
さてさて。まずはデータで活動の規模を見たのですが、ここからはそもそも何故こんな活動をしようと思ったのか、振り返りたいと思います。
僕が短歌を始めた2009年当時、NHKラジオ第一放送に「夜はぷちぷちケータイ短歌」という短歌のラジオ番組がありました。毎週出されるテーマに添って短歌を投稿すると、加藤治郎さんや穂村弘さん、東直子さん、斉藤斎藤さん、笹公人さんなど著名な歌人の方々に選歌していただけるというとても贅沢な番組。僕自身、この番組への投稿を通じて作歌を学ばせてもらった感がすごく強いのですが、あまりにも贅沢すぎる番組ゆえか、リスナーの間ではつねに「番組打ち切り説」が噂されていました。まだまだ短歌の世界を知らなかった僕からすると一番の活動場所がなくなるのは大事件です。投稿の場を失うことと、その場に参加する投稿歌人の作品が読めなくなるという危機感。そこで何を思ったのか、だったら自分で場を作ってやろうじゃないか、と奮い立ったのがきっかけのひとつ目です。(結局、「夜はぷちぷちケータイ短歌」はリスナーの心配をよそに2012年4月まで続きました。)
きっかけ其の2・短歌サミット2009
そしてもうひとつ、別のきっかけもありました。それは、2009年6月に「短歌サミット2009」というイベントの運営手伝いをさせていただいたことです。短歌を通じて150人を超える人が一カ所に集まり、作品などについてわいわい語りあっている姿を運営側から見ていて、短歌の魅力を広く世の中に伝えたいという欲求が生まれました。本業で広告制作に携わるものとして「短歌(というジャンル)の広告を作りたい」と思ってしまったのはもはや性みたいなものかもしれません。
2010年元旦の抱負
そんなふたつのきっかけが混じりあい、何かを始めようとしたときの心境と抱負が、僕の2010年元旦のmixi日記に綴られていました。
短歌サミットを手伝わせてもらったころから
短歌がもっと世の中に身近な文学になればいいなという思いがあって。
それはたぶん短歌の「文学としてのプライド」が高すぎることが
世の中から一線を画している理由なんだろうなという結論に至りました。
もちろん一部の著名な歌人さんたちはそのことにとっくに気付いていて、
あらゆる方法で短歌と世の中の垣根を取り払おうとされているのですが。
僕なりになにができるか。
いろいろ想いをめぐらせた結果、
やっぱり短歌はもっとかっこよくチャーミングになるべきだな、と。
文学ではなくカルチャーとしての短歌ならもっと広く受け入れてもらえる気がしています。
どれだけ口で「短歌ってカンタンだよ!」って言っても
見た人が短歌(と短歌を使った作品全体)になんらかの憧れを抱いてくれないかぎり
作ってみたいとは思いませんからね。
じゃ、どうしたら短歌がチャーミングになるか。
「デザイン×短歌」の方向で人目に触れるものを作りたいと思います。
具体的に言うと”zine”って呼ばれる簡単な雑誌を作ります。
雑誌タイトルは「みるたんか。」(仮)
短歌を「読む」のではなく楽しく「見る」ものにしたいという気持ちを込めて。
[2010年1月1日 mixi日記より抜粋]
構想段階では「みるたんか。」って名前だったんですよね。「読む」のではなく楽しく「見る」ものにしたいからってあまりにもストレートすぎるネーミング。うわー、「みるたんか。」じゃなく「うたらば」にしてよかった。ダサいぞ、2010年の自分。
この日記から半年後、うたらばvol.00【春恋】が誕生します。
創刊までには、どうすれば世の中に受け入れられるものが作れるか、思考を巡らせた時間がありました。「短歌×写真」という表現方法を選んだこと、あくまでも短歌を知らない人を読者と想定した選歌基準などについて、次回以降では深堀りしていきたいと思います。これからしばらく、お付き合いよろしくお願いいたします。