「うたらば」のポジションとこれから

創刊から4年半。「うたらば」が短歌の世界においてどのようなポジションのものになったのか、客観的なデータを元に考察してみたいと思い、アンケートを実施しました。今回はその結果の一部をご紹介しつつ、「うたらば」の役割について考えてみることにします。
(木)

アンケートを行いました

 短歌の世界における「うたらば」のポジションを考えるときに僕自身の思い込みで書くのはあまり好ましくないと思いましたので、客観的なデータを得るためのアンケートをTwitter上でお願いしてみました。ご回答いただいた皆さま、ご協力本当にありがとうございました。

 今回はその結果の一部を見つつ、「うたらば」が今後、短歌の世界においてどのような役割を果たしていけばいいのかを考えてみようと思います。

 アンケートにお答えいただいた方は全部で293名。所属の内訳は図1のとおりです。結社所属が約25%、同人誌参加者が約6%、学生短歌が約5%、残り約64%が無所属の方でした。男女比は絶対数の少ない同人誌や学生短歌では半々くらいですが、結社と無所属に関しては男:女=1:2。これは前回、2013年8月に行ったアンケートのときから変化はないようです。

図1: 回答者の所属内訳と全体における所属比率
2013年の調査に合わせて、「結社+同人誌」など結社以外にも所属をお持ちの方は「結社」所属として集計しています。

どこで短歌を発表するか

 さて、回答者の内訳はそのあたりにして、実際に「うたらば」がどんな場所にいるのかを見ていきます。アンケートで聞いた「いま特に力を入れて発表している場」の結果が図2のグラフです。グラフを分かりやすくするために上位10個の選択肢のみ挙げています。

 結果を見るとやはり結社所属の方からの参加は少ない模様。肌感覚としては結社所属の方もご投稿いただいているように思いますが、「特に力を入れている場」という聞き方だったので低めに出たのかな、という印象です。数値的には結社所属の方の約1割が参加してくださっていることになります。同人誌のだと約2割程度、学生短歌では約3割程度、無所属では約4割程度が力を入れてご投稿いただいている場という結果でした。これだけたくさんの短歌発表の場があるなかで一定の人に投稿してもらえているというだけでありがたい話なのかもしれません。

図2: 「いま特に力を入れている短歌発表の場」集計結果

何を読んでいるか

 アンケートでは「普段からチェックしている短歌関連の媒体やWEBサイトをお答えください」という質問も投げかけました。その結果が図3です。

 短歌を詠まない人に短歌を届けることを目標として活動しているプロジェクトですので結社所属の方はさほど積極的には見ていないだろうと思っていましたが、意外にも上位10個に入っていたのが驚きでした。

 「うたらば」を運営する僕自身がアンケートを作って回答をお願いしているという条件によるところは大きいかもしれませんが、ありがたいことに無所属では一番多くチェックされている媒体という結果でした。同人誌や学生短歌の方々にもそれなりにチェックをされていることが分かり一安心です。

図3: 「普段からチェックしている短歌関連媒体」集計結果

3つの壁

 僕が短歌を始めたころ、正直なところ結社のことは何もわかりませんでした。著名な歌人さんのプロフィールなどで結社名だけは知っていても、そこがどういうところなのかまでは知らない。ネットを使って調べようにも、そもそも結社が普段どんな活動をしている組織なのかまで詳しく説明されている場所は見つけられず、ぼんやりとしたイメージだけが頭の中にありました。最終的には、イベントで結社所属の方々とお会いして直接話を聞くことでどのような場所かをはっきりと理解した記憶があります。

 今回のアンケートでも無所属の方々が「結社に入会しない理由」については「どういう場所かよくわからないから」がトップ(図4)。「よくわからない」が先行していることを考えると2番目に挙っている「自分には厳しすぎると思うから」はイメージによる部分もあるのではないでしょうか。

 このような結果を見ていて僕が感じるのは、短歌を知らない人から短歌を詠むことが日常になっている人までの間には3つの壁がある、ということ。1つ目の壁は「短歌を読む/読まない」の壁。2つ目の壁は「短歌を詠む/詠まない」の壁。そして3つ目の壁は「結社に入る/入らない」の壁。3つ目の壁は必ずしも越えなくてはならないものではありません。ただ、壁の向こうを知った上で、それぞれの人が自分に一番合う環境がどこなのかを判断できるくらい見通しがよくなるといいな、と勝手ながら願っています。

図4: 無所属の方に聞いた「結社に入らない理由」集計結果

入り口から結社まで

 創刊時からの想いである「短歌を知らない人に短歌を届ける」ことにより、「うたらば」は短歌への入り口としての機能を少なからず持っていると思っています。もっとも、発行部数や配布店舗数が少ないので影響力はわずかですが…。「うたらば」が短歌を詠まない人の手に渡り、1つ目の壁はもちろん、2つ目の壁を越える、つまり自分でも詠んでみようと思ってもらえるきっかけになるように、活動の規模を広げていきたいところです。

 一方で、創刊から5年の活動の中で「うたらば」にはもうひとつの可能性が出てきているように感じています。それが3つ目の壁に関すること。アンケートにて結社所属の方に入会した理由をお伺いしたところ、一番の理由が「短歌上達のため」、その次に挙がったのは「好きな歌人が所属していたから」でした(図5)。

図5: 結社所属の方に聞いた「結社に入ったきっかけ・理由」集計結果

 ありがたいことに「うたらば」は無所属の方々が特にチェックしてくださっている媒体です。すでに結社所属の方からもご投稿いただき、毎回のようにその作品がブログパーツや「うたらば」誌面上に掲載されていますが、この傾向が加速して結社所属の方の作品が無所属の方の目に触れる機会が増えることで3つ目の壁の向こう側を知るきっかけになり得るのではないか。そんな期待をしています。

 そんなわけで、目指したい「うたらば」のポジションとしては、短歌を知らない人から結社所属の人まで幅広く読まれる媒体となり、短歌を詠みはじめた人が「うたらば」投稿者の作品を通して結社に興味を持ち、そこがどんな場所なのかを知るきっかけを作ること(図6)。そのためには、ネット上だけの交流に留まらず、オフラインでも出会えるイベント「うたらばの集い」は定期的に開催していく必要はあると思っています。

図6: うたらばの目指すポジション
さまざまな所属の人に参加してもらうことで交流を生み、短歌を始めたばかりの人がその先どこで詠むかの選択肢を増やせるような場にしたいです。

 短歌を知らない人から結社所属の人までをカバーするなんて欲張りすぎる!と言われそうな理想ですが、所属に関係なく参加できる短歌発表の場としては少々無茶な野望を持って結社誌や短歌専門誌がカバーできない領域を狙っていくくらいでないと、短歌全体の活性化には貢献できないような気がしています。

 短歌に関わるすべての人のご協力なくして、「うたらば」は短歌の魅力を外部に発信する媒体にはなりえません。短歌のご投稿に限らず、配布場所探しや知人へのご紹介など、今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします。

記事のカテゴリー:連載記事, うたらばのたられば
たなか・ましろ
1980年生まれ。コピーライター、CMプランナー。2009年、短歌に出会う。「短歌サミット」、「名短」など短歌イベントの企画・運営協力を経て、2010年、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」を創刊。短歌を広める活動に力を入れている。2012年、連作『告げられる冬』で短歌研究新人賞候補作。2013年、「短歌男子」企画・制作。「かばん」所属。
Website うたらば
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